第29回 長崎セミナー
講演 村瀬幸浩先生 *講演レジュメを一部紹介
演題
「男子・男性の性を育てる~より幸せな関係づくりのために~
男子(性)はこれまで性についてまともに学んだり、しっかり教わったりすることなど、ほとんどないままに勝手に育って(育てられて)きたのではないか。また、一般に語られる「オトコの性」は自分中心で、こらえ性のない、どうしようもないものとして扱われ、DV、セクハラ、レイプ、痴漢など加害性、暴力性と結び付けられることが多かったと思う。・・・・・
1.生まれつき暴力的な男子はいない(はずである)。
どのように育てられてきたのか。 *自己肯定感を高めたり、おとしめたりする働きかけ・ふるまい
(a) 家庭での育ち (b) 学校での学び、体験 (c)社会での扱われ方
2.男子の性は教育・学習の対象とされてこなかった。
学校での性教育は基本的に女子の性が中心で、放置され続けてきた男子の性。卑しい、価値なきものという扱いの中で育つセックス観(快楽性の蔑視)
性的欲求、性的衝動への4つの対応・・・①我慢する。②ほかごとで紛らす。③一人で満足させる(self-pleasure 自己快楽、自体愛)
④Sexual Communication(性交渉、相手との関係づくり)
3.射精学習のすすめ・・・・自己の性を肯定的に受け止めるために
4.マスターベーション(手淫、自涜、自慰)をセルフプレジャー、セルフケアとして
(a)「快楽」を肯定的、ポジティブにとらえ直す。(b)自体愛(相互愛の替わりではなく、目的も意味も異なる性行為)(c)エチケット・マナーを大切に(強い刺激や圧迫刺激に慣れて性不全につながる懸念) (d)生涯の性と生という観点(性の主体者意識を持つ)
5.男子の性被害 性的いじめの深刻さ 強姦罪→強制性交等罪へ
(a)プライベートパーツ(口、胸、お尻、性器)に対する不本意な扱われ方の強要は、女子の被害と同様、深刻な人権侵害である。
(b)男というジェンダー意識が被害を明らかにしにくくさせてきたー自死へのつながりもー
(c)性被害の体験がやがて性加害を引き起こす理由になりかねない。
6.男子に学ばせたい性の学習の中身
(a)射精学習を核とした自らの性の追求、理解を通して自己肯定感を獲得する。
(b)女子の性に対する深い理解・・・生きた人間の生理・心理そして関係性の認識へ(メディアリテラシーの観点)
性の関係性を問い直す・・・同意を求める感性、自ら退く力
(c)自らの性の「生殖可能性」について、あらためて理解する。予期しない妊娠など
(d)性の多様性についての認識をひろげ深める。
*思春期の発達課題としての「性的成熟」と「精神的自立」 *ポルノ的な性表現とエロス的な性表現